ヤドさん
僕の実家ではやどかりを飼っています。六匹のやどかりがいて、全員「ヤドさん」という名前です。ときどき僕が餌を水槽に入れると、みんな一斉にえっちらおっちらとエサを探し始めます。今までまっすぐ歩いていたのに、エサの前で急に引き返したり、目の前にエサが落ちているのに通り過ぎてみたり、とってもどんくさいですが、見ていてすごく癒されます。
ときどき水槽の方からカツン、カツンって音がしてきます。歩いている彼らの殻が水槽に当たっている音です。
普段は僕の方から水槽をのぞき込まないと彼らがどうしているか確認ができませんが、ある時ふっと彼らの生活音が聞こえてくると何となく嬉しい気持ちになります。
普段は視覚的にしかその「生」を実感できませんが、ある時急に聴覚的にそれを実感できると、嬉しくなるというか、楽しくなります。向こうの方から、「いまなにしてんの?」って聞かれたような気がします。
犬とか猫と違って、こういう水生生物って鑑賞目的で買う人が多いじゃないですか。鑑賞って、水生生物の方が人間に対して受け身な存在じゃないですか。でもそんな彼らから「俺らここにいるよ」みたいな、生きている音が聞こえてくると、楽しい気持ちになるのと同時に、かわいいなって気持ちがより一層強くなります。
多分なんですけど、猫を飼っている人が、パソコンを触っているときに、キーボードの上に乗っかって邪魔をしてきたときの気持ちと似ているのかな。
人間の「動物と一緒に暮らしたいって気持ち」と、動物の「お前と生活するの楽しいぞっていう気持ち」の往来が僕たちの心を癒してくれるんじゃないのかな。
いかにも自分がヤドさんを飼っているいような風に書きましたが、実際は姉が世話をしています。笑
エサをあげてる時にふと感じたことでした。